ということは、結構前から聞いていた。
「明」という名前で、
あの『さぬきうどん全店制覇攻略本』でさえ、
所在地のみ掲載されただけで、
それ以外の情報はほとんど載っていない情況だった。
娘が香川で暮らした2年間の間に、
一度はその店を訪れようと思っていたが、
結局叶うことなく、時が流れてしまった。
今回の旅の締め括りに、この『明』へ行くことに決めた。
地図を頼りに、坂出港のその道を走るのだが、
明はなく、「とらや」といううどんやがあるだけだ。
何度かその近辺を走ってみたが、それらしいうどんやはなく、
どう見ても、その地図上の店は「とらや」だったので、
そこに入ってみることにした。
入ると中はコの字型のカウンターになっていて、
近所の工場の常連さんらしき人で賑わっていた。
メニューの中に、「明うどん」という名前を見つける。
店の入り口近くの張り紙を見たら、
明から、うどんの味を引き継ぎ、
別の経営者がとらやを開いたらしいということが書かれていた。
この旅では、冷たいうどんに冷たいダシが中心のシリーズで
食べていたこともあって、メニューの中から、
食べてみたかったおんたま(温泉玉子)カレーうどんをオーダーした。
しばらく隣のおじさんが頼んだ、明うどんをチラチラみたり、
正面に座ったおばさんが天ぷらを3品も乗せた大盛りうどんを
かきこんでいる姿を見たりしているうちに、
目の前に、紙ナプキンの大きいようなものが置かれた。
ん?何これ?
広げてみると、紙で出来たエプロンだった。
カレーうどんを食べる時は、よっぽど注意していても、
気がついた時には、洋服にカレーが飛んでいたりする。
そのために、紙エプロンを出してくれるのだ。
へー!感心しながら、首からかけて、紐を結んでみる。
そのうち目の前に運ばれてきたおんたまカレーうどん。
濃い色の濃厚そうなカレーの上に、
白いきれいな温泉玉子が乗っている。
玉子を崩してみると、茶色のカレーの上で黄色の花が開いたようで、
見ているだけで、旨さが伝わってきた。
カレーとダシ、それにツルツルのうどんとの組み合わせは、
日本人にしか理解できない感覚かもしれないが、
絶妙のハーモニーを奏でる。
またとろりと溶けた玉子を混ぜると、
不思議なことにカレーに甘味がプラスされるのだ。
カレーが飛び散る心配をせずに、
ズルズルうどんをいただくことができた。
結局、明には行くことは叶わなかったが、
明の味をそのまま引き継ぐ店、とらやは、
やはりさぬきうどんの名店だと思った。
とらや
香川県坂出市沖の浜1-4
0877-45-7366
営業時間 10時30分〜19時(売り切れ終了あり)
定休日 木曜
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