やたらコーヒーが飲みたくなります。
時間があるので、カップボードに並べてあった
ノリタケのコレクションから、
一つづつ取り出してきて、
写真を撮って、珈琲を味わう時間が、
結構、落ちつけたりします。
その昔、といってもたつやが高校生の頃だから、
も40年以上前のことですが、
想い出のカップも出してきました。
このカップのことは過去のブログにも書いているのですが、
読んでない人がほとんどだと思うので、
こんな夜は想い出に耽りながらブログを書きます。
たつやが学校の帰りに立ち寄っていたのは、
まだ出来て間もない客席数が12.3席しかない
小さな喫茶店でした。
確か合唱部の先輩に連れて行ったもらったのが、
最初だったと思います。
雑居ビルの中にあり、焦げ茶色の木製のドアでした。
中に入ると白い壁とドアと同じ色のカウンター。
常連さんはほとんどカウンターに座り、
たつやたち新参者はテーブル席に座ります。
名前はJUNON。
オーナーは多分、20代後半の色白の美人でした。
今になって思えば、
カウンターに座ってタバコを吸いながら、
珈琲を飲んでいたおっさんたちは、
皆、このお姉さんが目当てだったのかも。
だってどう見ても、ストレートコーヒーの味なんて、
わかりそうな感じの人はいなかったもん。
普段はブレンドコーヒーが250円で、
ストレートコーヒーは300円〜450円くらいだったと
記憶しているのですが、
小さな黒板に『本日のサービスコーヒー』
その下に、モカ300円とか
キリマンジャロ300円とか、
日替わりでストレートコーヒーが
いつもより安く飲めたのです。
たつやもコーヒーの味なんて、
ほとんどわからなかったのに、
「じゃ、今日はキリマンジャロで」
なんて偉そうに注文していました。
その頃の喫茶店には、
マイカップというシステムがあって、
常連さんは、自分専用のカップをお店に置いてもらい、
行くと、そのカップで珈琲を淹れてもらえるという
ちょっとお洒落なものでした。
カウンターに座ったおっさんが、
やたら色がついて、キラキラ光る
品のないカップで珈琲を飲んでいました。
でもマイカップがあることは
うらやましい!
ある日のこと、たつやは思い切って、
マイカップを探しに行く決意をします。
武生の商店街の中にあった陶器店に行って、
店の一番奥の棚に並んでいたカップ&ソーサーを
全部、じっくり見ました。
あまり好みじゃないなぁ・・・
と思いながら、左から右へ行くと、
あっ!これや!これがいい!
それは小ぶりのカップ&ソーサーで
たつやの好きな緑色一色の絵柄でした。
もうそれしか見えません。
後ろにいたお店のおばさんに、
ガラスケースから出してもらいました。
「これください!あっ、でもいくらですか?」
「いいもの選んだわね。これはノリタケよ。
それにノリタケの中でも、
グレードの高いやつだから、3000円よ」
高校生のたつやにすれば、
びっくりするような価格でしたが、
お年玉からやりくりすることにして、
数日後に取りに行きました。
そしてその足で、JUNONに行きました。
「お姉さん、僕のカップです。置いといてください」
「あら、たつや君も仲間入りね」
箱から取り出したたつやのカップ&ソーサーを見て、
「わぁ、なんて可愛いカップなの♫
でもちょっとたつや君には似合わないかなぁ」
と言って笑いました。
またその顔を見て、たつやの胸は高まるのでした。
早速、珈琲を淹れてもらいました。
自分のカップで飲むコーヒーは格別でした。
味なんてわからないはずなのに、
絶対に美味しかったのです。
以来、JUNONに行くと、
たつやのカップが黙って出てきました。
生意気に女の子を喫茶店に誘って、
たつやだけ違うカップで出てくることが、
誇らしげでもあり、自慢でした。
喫茶店に自分のカップがあり、
珈琲を飲むことが大人への入口のような
憧れがあったのでしょう。
やがてたつやは高校を卒業し、
東京へ行きました。
帰省する度にJUNONへ行っていたのですが、
2年目の夏に行った時に、
「たつやくん、ごめんね。これ返すね」
あのたつやのノリタケのカップ&ソーサーが
戻ってきたのです。
「お店閉めることにしたんだ・・・」
理由を聞きたかったのに、
何故か聞きませんでした。
「そうですか、今までありがとうございました。」
たつやの淡いお姉さんへの憧れが
終わった瞬間でした。
東京へ戻る際に、そのカップ&ソーサーを
一緒に連れて帰りました。
安物の食器棚に入れたままで、
ほとんど使うことはありませんでした。
それは福井に帰ってきてからも同じでした。
何十年か過ぎて、アンティークのカップ&ソーサーに
興味を持ったたつやは、
当然、ノリタケの存在を知ります。
あの時、あのおばさんが言った言葉・・・
ノリタケだからね・・・
食器棚の奥に眠っていたカップ&ソーサーを
出してきて、カップの裏を見ると、
それは紛れもないNORITAKEでした。
そしてSTUDIO COLLECTIONと書いてあります。
確かにノリタケの中でも、
ランクの高いシリーズだったのです。
何ていうセンスを持った高校生だったんだろう。
我ながらいい感性を持っていたことに、
一人感激しました。
今でも時々、出してきて、
この小ぶりなカップで珈琲を味わいます。
JUNONの店内やお姉さんの顔が浮かんできます。
やっぱりたくさんの方にブログを見ていただきたくなりました。
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