

岩野市兵衛さんが歌う紙漉き歌を聞いた時、涙が流れた。
たつやがお付き合いさせていただいている京都の染色作家、玉村咏さんが、
金津創作の森で個展をされたときに、岩野さんがお話をするという話を聞いて、
たつやも出かけて行った。
http://onmyojitatsuya.seesaa.net/article/377625872.html
ちょうど一年ほど前のことだ。

岩野さんは越前和紙の人間国宝という方なので、
おいそれとは会う訳にはいかないと勝手に思い込んでいて、
今までにお会いする機会がなかった。
ただ、ずっと前からお会いしたかった人だったので、
この日、玉村さんのおかげで、長年の夢が叶ったのだった。

この日、岩野さんのお話が終わった時に、青山291の井上館長から岩野さんへ
こんな粋なリクエストがあった。
それは紙漉き歌をこの場で歌って欲しいというもの。
それでは、越前紙漉き歌、歌わせていただきます。
♪五箇に 生まれ〜て 紙漉き習ろて〜♪

もう岩野さんがお歌いになるからかわからないが、
何故かポロポロと涙がこぼれてきた。
本当に心に沁みてくる歌で魂が震える感じだった。
何百年も前から歌われているであろう紙漉き歌は、
どこか懐かしくて、ちょっぴり切なくて、
心が温かくなって、幸せな気持ちにさせてくれた。

もうそれだけでも十分だったのに、
再び玉村さんからご連絡をもらって、
今度岩野さんの家に遊びに行くから、たつやさんも一緒に来ないか?
などという超ありがたいお誘いの電話をいただいた。


それにたつやが岩野さんの紙漉き中の写真を撮りたい
ということを岩野さんに伝えてくれるというのだ。
そしてこの夏、岩野さんのご自宅へ
玉村さんと一緒に訪問することが出来た。

岩野さんは80を過ぎて、一切のマスコミの取材を断っている。
今まではいろんな取材を越前和紙のためという理由で、受けてきたが、
80歳も過ぎたし、そろそろ自分のやりたいことだけをしたいと、
どんな取材依頼も丁重にお断りしているのだそうだ。

そんな中を、たつやは個人だし、友だちみたいなもんだから、
仕事場に来て、勝手に写真を撮ってるだけ・・・
ということで、撮影をさせてもらうことが出来た。
それがどんなに光栄なことで、ありがたいことだったかは、
今になって考えても、涙が出るくらい幸せなことだった。

紙漉きの行程や材料の説明をたつやにも丁寧に教えていただきながらも、
同じ作業を同じように繰り返し、和紙を漉いていくのだ。
厚さの誤差は100分の1mmという。
時折、たつやの方へ優しい眼差しを向けてくれるのが、
何とも温かくて心地よくて、本当に幸せな時間だった。

奥様は冷たい水が流れる別棟で、たらいの中に両手を入れて、
和紙の原料となる楮の繊維状にしたものから、
ほんの小さなゴミや汚れたものを取り除いている。


その後、ご自宅にまで招いてくださり、
しばらくお話する時間までいただいた。
それにしても何と謙虚で、優しい方なのだろう。
人間国宝というのは、紙漉きの職人としての称号なのだろうが、
岩野さんはそのお人柄が国宝に値するのではないかと思うほど、
素敵な人だった。

今までいろんな願いが叶ったけど、
やっぱりそれは口に出して、一生懸命話して、
熱を持って、誰かに伝えるからこそ、
成し得たことなのだと思っている。
岩野さんと玉村さんに心より感謝しています。
ありがとうございました。
いつもありがとうございます。
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ココ


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