水ようかんがある。
場所によっては丁稚ようかんとも呼ばれる。
しかし全国的に見れば福井のそれらは他の地域とちょっと違うようだ。
福井の水ようかんは冬に食べるもので、
和菓子店の数だけ水ようかんがあると言っても過言でないほど、
すごい種類の水ようかんがある。
そのため、福井人にはそれぞれ贔屓の水ようかんがある。
たつやが子どもの頃には、水ようかんは、
赤い漆が塗られた木の箱に入っていて、近所の和菓子屋さんの名前が入っていた。
かなり大きな木の箱で、多分60cmくらいはあったのではないだろうか。
今のB5くらいの大きさの箱なら五つ分はあったように思う。
台所の片隅に置いてあって、食べたい時には、
そこへお皿を持って取りにいくのだった。
薄い木のヘラを使って、水ようかんをそっと取り出した感触は今でも覚えている。
と同時にツルリと口に滑り込んできた冷たい水ようかんの食感もはっきり残っている。
さて先日、敦賀市にある老舗和菓子店、御菓子司・森本さんの
水ようかんを作る工程を見学する機会を得た。
朝一に訪れた時は、紅白のお饅頭をセイロで蒸しているところだった。
冷たく凛と張り詰めた空気感の中で、水蒸気がもうもうと上がっていた。
セイロから出された紅白のお饅頭は、実に美しかった。
お饅頭ってこんなにきれいなんだ!
色もカタチも、おそらく触った感触も、全部きれいに思えた。
いよいよ水ようかんを作り始める。
この道、50年というベテラン職人さんの吉田さんだ。
水に浸けておいた寒天を火にかけて、
舟の櫓のような大きな木のヘラで緩やかにゆっくりゆっくりかき混ぜていく。
完全に溶けきると、今度はザラメを入れて同じようにヘラで溶かしていく。
店によっては上白糖を使ったり、黒糖を使ったりするが、
森本さんはザラメを使用していて、これは少なくとも50年間は変えたことはない。
今度はきれいに濾された餡子を加えていく。
驚いたのは、えっ?こんなに入れるの!?
と思うほど大量だ。
もちろん餡子は自家製。
後はただひたすらヘラでずっと混ぜるのだ。
それも同じリズムで身体全体を使って攪拌する。
この作業からは使うのは右手だけ。
左手は腰の辺りに回して、左右のバランスをとっているように見える。
銅鍋の底から上がってくる泡の具合を確かめて火を止める。
それを大きなステンレスのボウルに移し、
たっぷりの水を張ったシンクにそれを浸けて粗熱を取っていく。
やはりここでも攪拌は続ける。
それをしないとボウルの中の水ようかんが、回りから固まってしまうのだそうだ。
時折、水の温度も一定になるように左手でかき混ぜる。
人肌にまで温度が下がると、片手鍋に移す。
そしていよいよ箱に移していくのだ。
泡が出来ると、その水ようかんの肌がきれいでなくなるという理由で、
泡は全部吉田さんによってつぶされていく。
水ようかんに写る吉田さんがかっこよく見えた。
約2時間の作業中は持ち場を離れることは出来ない。
一連の作業にはまったく無駄な動きがなく、
この道50年の職人さんの技を感じた。
吉田さんに職人さんの素晴らしさを話した時にこんなことを言われた。
時々思うんですわ、大工さんとかモノ作りの職人さんは、
作ったモノが残るからいいなぁって。私らのは・・・
確かにそうかもしれない。
でもたつやはこう思うと伝えた。
吉田さんによって作られた水ようかんや和菓子は、
完成した時に吉田さんの手を離れる。
しかしながらその後には数々の物語があるはずだ。
正月に親子親戚が集まって、皆で水ようかんを食べる。
あ〜、この水ようかん懐かしいなぁ・・・
死んだじいさんも好きだったなぁ。
あの頃は貧乏だったけど幸せだったねぇ・・・
などといろんな思い出が水ようかんの味を通して甦るのだと思う。
それはカタチとしては残らないけど、記憶に残るのではないか。
それを話した時に吉田さんは、少し納得したように笑顔を見せてくれた。
森本には創業の年(昭和6年)に生まれた名物おかみさんが、
365日店番をされています。
ご縁を大切にしたいという思いで、
五円玉を使った縁起物の根付をお客さんにプレゼントしています。
たつやもひとついただきました。
出来たての長命水ようかん、ほんの少し甘さを控えた優しい味の逸品でした。
また買いに行きたいと思います。
冬の名物ですが、森本さんでは一年を通じて長命水ようかんを作っています。
このらくがんもとっても美味しいんですよね。
木型が歴史を感じさせてくれます。
御菓子司 森本
福井県敦賀市神楽町1丁目2-23
TEL: 0770-22-0329
営業時間: 7:00〜19:00(日祭日は17:00まで)
定休日:無休
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福井の水ようかんは、ほんとにいろいろありますが、
敦賀のこのお店はどんなお味なんでしょうか?
私、現在福井市内に住んでいます。
福井の黒砂糖の入った水ようかんも好きですが、
やはり郷里小浜の、丁稚ようかんが一番好きなんです。
たつやさんが何度かこのブログに載せられた「志保重」さんは、
実家の近くなので、もちろん大好きなんですが、敦賀はどうなのかなぁと思いまして…(笑)
森本さんの水ようかん、ホントに美味しかったですよ。
すべて手作りで砂糖はザラメを使っていて、あっさり系の美味しさです。
嶺北で黒砂糖を使ってる店が多いですが、嶺南は使わない方が多いようですね。
志保重さんのも美味しいですよね♪