ちょっと気になる看板が目に留まった。
『第N無人居住区・・・5F』
いったい何なのだろう。
古本屋の細長いビルの上の小さなギャラリーで、
何かしら面白いアートが展示されているのではないかと思った。
エレベーターのスイッチの5を押した。
...2...3...4...5
開いたドアの右奥に「第N無人居住区開催中」が、
一文字ずつ10枚のB5の紙にプリントアウトされ、
黒のテープで無造作に貼られている。
中の部屋は薄暗い。
部屋の隅にちょうど人の背丈と同じ位の、
細かい箱を積み重ねたようなものが見えた。
近づいて見ると、それは段ボールで作られた雑居ビルが
無秩序に重なり合って、出来たひとつの町だった。
ここへ来て、ようやく無人居住区の意味を知る。
この町は廃墟のようでもあり、要塞のようでもあり、
人は住んでいないが、何かしら得体の知れぬものが
住み付いているかのようでもある。
たつやが子どもの頃、とても怖かった景色がある。
それは海沿いにあった大きなセメント工場の夜景だった。
それこそ継ぎ足し、継ぎ足しで巨大になっていった工場、
所々に電気がついてるが、白っぽい光だけ。
そこには人の気配を感じることのない空間と、
巨大で得体の知れぬ不気味さが、
子ども心にも、恐怖心を覚えた。
その工場が出てくる夢は、小学校の高学年まで見た。
この第N無人居住区を見てると、
そのセメント工場のことを思い出した。
何とも言えない一種異様な世界。
それにしても細部まで丁寧に作りこんでいる。
いろんな角度から見ると、また違った世界が見えてくるのだ。
もしカメラ搭載のミニミニヘリコプターがあったら、
この無人居住区を飛ばしてみて、その映像を見てみたいと思った。
第N無人居住区とは・・・
市街地無人化計画により住民が強制退去させられた街
という設定で作られた。
段ボール製の廃墟風オブジェ。
時々無人化前のN区を表現することもあります。
その他設定のいろいろ
・二足歩行のうさぎが住んでいる。
・銘菓は「電気ドーナツ」
(こちらの世界でいうクッキーのスノーボール)
・区民はみんな増築が好き
・区民はみんな無節操で無頓着
・自警団との闘いもそこそこ呑気
・増築王は今井ゴムホースという店の今井さん
・「狐飯店」「一つ目商店街」「ナントカ座」
「今井ゴムホース」などの看板をよく見かける
・強制退去命令が出た後も動力部は生きている
・BarBarモノアラガイのサインボールは待ち合わせスポット
・子どもたちに人気のアニメは『魔法乙女レモンシフォン』
etc
作家さんは燈(ともり/Tomori)さん
山梨県甲府市生まれ。
東京在住。
語学系大学を卒業後、独学で立体造形を始め、
販売業・IT企業で働きながら作家活動をしている。
立体オブジェの他、音楽やイラスト・絵など。
写真を一枚、撮らせてくださいとお願いしたら、
こんな一枚になりました。
アニメの世界に入り込んだような感覚になったり、
どこからか聞こえてくる誰かの声、
とても不思議な世界にいざなってくれました。
いろんな才能のある人が世の中にはたくさんいるんだなぁ・・・
東京初日の初めから面白い世界と出会いました。
場所:神田神保町 Art Space Sawa
日時:2015年9月18日(金)〜27日(日) 期間中無休
12時〜17時(24日・25日以外作家在廊)
Art Space Sawa
東京都千代田区神田神保町1-7日本文芸社ビル5階
070-6512-5062
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