2015年08月11日

へしこ賛歌

今日のブログは、先月7月のNHK第一のラジオ深夜便
「日本列島くらしのたより」
お話させていただいた内容とよく似ています。





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いきなりですが、「へしこ」という食べ物をご存知ですか?

福井の美味しい食べ物は本当にたくさんあって、
代表的なものだとコシヒカリや越前ガニ、塩雲丹、おろしそばやソースかつ丼などが
挙げられますが、へしこもそのうちのひとつです。
へしこは福井県民であれば昔からある伝統的な地元の保存食として知っているのですが、
まだまだ全国的には、知名度は高くないかもしれません。

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へしこをご存じない方に簡単に説明しますと、鯖やイワシ、イカなどを塩漬けし、
さらに糠漬けする福井の保存食です。
福井では若狭から越前、三国までの海沿いの町にはどこでもあります。
へしこは出来るまでに最低1年ほどかかります。
塩気はかなり強いのですが、一年をかけて熟成・発酵することによって、
魚のタンパク質が旨味たっぷりのアミノ酸に変化し、
それはそれは美味しい珍味になるのです。

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実はたつやはへしこに魅せられ、3年前から自分でへしこを漬けるようになりました。
きっかけは4年前に福井市内のカフェで行われた福井を発信するための
勉強会のワークショップに参加したことです。
全国でも知名度がとても低い福井をどうやったら発信できるか!?
というテーマで話合いをし、
参加者それぞれが小さな紙にキーワードを書き込み、提出しました。
東京から来られていたコーディネーターが紙を読み上げ、
「え〜、ヘレン・・・。ヘレンって何ですか?これ書いた人は?」と聞きました。

ですが参加者はぽかんとした顔をして、誰も返事をしませんでした。
しばらくして、「先生、それヘレンじゃなくてへしこじゃないですか?」
と誰かが言いました。
鉛筆で走り書きだったから、
先生は平仮名の『へしこ』という文字をカタカナで『ヘレン』と勘違いしたのでした。
へしこの「し」をカタカナの「レ」に、
へしこの「こ」がカタカナの「ン」に見えたのでした。
そこからとても話が盛り上がりました。
自分たちでへしこを漬けてみよう!
それが福井発信の第一歩だ!
ということになったのです。

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翌年、「ヘレンプロジェクト」が始まりました。
南越前町で料理民宿をしている『さへい』の南さんご夫妻が
私たちのわがままを聞き入れてくれて、
それこそ数百年続く、先祖代々伝わるへしこの作り方を教えてくださったのです。
『さへえ』に伝わるへしこは、国産の鯖を使い、
塩と糠、米麹、タカノツメだけで漬ける伝統的な作り方です。
添加物や保存料は一切使わないということも私たちにとっては大切なことでした。

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まずは国産の鯖を開いて内臓を取り出し、水洗いします。
慣れない出刃包丁を使って、背開きにします。
魚を捌くことはたつやは慣れているのですが、
やはり魚を捌くと血がいっぱい出るので、
慣れていない他の参加者はキャーキャーと騒いでいます。
ですが、へしこ作り名人のおばあちゃんや南さんに手ほどきしてもらい、
5匹も捌けば、出来るようになります。

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次に塩をします。
大量の塩を用意し、その中に開いた鯖を入れ、内側にたっぷり塩をします。
外側にも塩をし、折りたたんで大きな桶に並べていきます。
ちょっとした家庭のお風呂くらいの大きさの桶には鯖が約200匹入ります。
木の蓋をして、その上にコンクリートブロックを乗せ、
さらに重しになるコンクリートの塊をフォークリフトで載せます。
約250キロです。
この状態で1週間から10日間、塩漬けをするのです。

塩漬けが完了すると、桶から鯖を出し、水洗いをして塩出しをします。
今度は餅を入れるような大きな箱に糠を用意し、
鯖の内側にたっぷり糠を押し込んで、再び桶に並べて行きます。
へしこの塩の具合や味はこの糠の量や味に左右されると言います。
ここで質の悪い糠や量が少ないと塩くどいだけのへしこになってしまいます。

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桶の一番下が鯖でいっぱいになったら、全体に糠をまぶし、
そこへ輪切りにしたタカノツメと米麹を蒔きます。
これの繰り返しで200匹を重ねていくのです。
ヘレンプロジェクトではこの作業時に、
皆で「美味しくな〜れ!美味しくな〜れ!」

と声をかけて漬けることが重要だと考えています。

再び蓋をして、250キロの重しをして、倉庫で1年間寝かせるのです。
へしこは暑い夏を超えると美味しくなると言われていて、
そのことを『へしこが沸く』と表現します。
一年が経って、へしこを上げる時は、いつもワクワクドキドキします。
一本目を取り出し、その場ですぐに刺身にして、
皆で味見をする瞬間が一番の楽しみです。
「わぁ〜!美味しい美味しい!」
皆が笑顔になる瞬間です。

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たつやは初年度30本、2年目が100本、そして昨年は120本を漬けました。
自分で漬けたへしこがこんなにも美味しくできたことに感激し、
また福井の代表的な保存食の素晴らしさを実感して、
出来たへしこは親戚やお友達にプレゼントしています。
先日も東京に住む今庄出身の同級生のところに持っていきました。
「ええ!?これフジタが作ったの?すげー!」ととても喜ばれました。

たつやはお酒は飲めないのですが、
お酒の好きな方にとっては最高の酒の肴なのだそうです。
たつやは生のままスライスして、刺身でアツアツのご飯に乗せて食べるのが一番好きです。
また糠をつけたままさっと炙って、お茶漬けにしたものは最高です。
ほぐしておにぎりに混ぜ込む食べ方も美味しいですし、
最近ではパスタに使われたり、調味料のように洋食で使われることも多くなってきました。

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今年のヘレンプロジェクトは更に進化しました。
昆布と一緒に漬けるへしこ。マンゴーを一緒に漬けるへしこ。
酵素と一緒に漬けるへしこ。にんにくを一緒に漬けるへしこ。
葉とうがらしを巻いて漬けるへしこなどなど。
小さめの樽に20匹ほどで漬けこみました。
結果が分かるのは一年後です。

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こうした遊び感覚で作った福井のへしこが持つポテンシャルを最大限に引き出し、
いずれ地域オリジナルとして、商品化されて流通していけば、
本来の目的である『ふくいを発信』につながっていくものと信じています。







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ラベル:へしこ 男の料理
posted by たつたつ・たつや at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | グルメその他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする