勝山に行くと必ずと言っていいほど立ち寄りたくなるお店がある。
『八助』という小さなそば店である。
今週末は勝山の左義長が開かれ、大勢の観光客が訪れる。
その左義長に魅せられて、あの椎名誠さんも毎年のように
勝山にやって来て、八助でおそばを食べる。
たつやがこのお店に行くようになって、もう13年ほどになると思う。
八助はお店の雰囲気やおそばの味はもちろん、
そばチケットなるものが存在し、5杯分で1900円・10杯で3600円
というサービス価格もありがたくて、時々利用させてもらっている。
八助に併設されて義野商店という小さな製粉所がある。
正確に言えば、義野商店に八助が併設されていると言った方がいいだろう。
ガラス越しに親父さんが玄蕎麦を石臼で挽いているのが見える。
ちょうど左義長に備えて、そば粉を挽いているらしい。
親父さんに声をかけて、撮影をさせてもらう許可をもらった。
中は霧が立ち込めたように、そば粉が舞っていて、
奥で作業している親父さんが霞んで見えるほどだ。
しばらく撮影しながら親父さんの動きを見ていたが、
まったく余計な動きが無く、淡々と同じ動作を繰り返している。
この工場は親父さんのお父さんが戦後すぐに設備したものだそうだ。
壁には古い大型のモートルや電圧計が見える。
モートルからベルト駆動で石臼を回している。
石臼はそば粉を挽いている時は問題ないが、
空のまま石臼を回していると擦り減ってしまうので、
そば粉が切れないように気を張らなければならないという。
この中にいると今が平成で21世紀であることなど忘れてしまう。
それほど昭和そのものの工場なのだ。
設備も建物も、親父さんも全部がノスタルジックでいて、
ちゃんと製粉所に機能を備えている。
大量生産をするのは難しいだろうが、近場のお客さんや、
八助でのそば粉くらいなら、ちょうどいい設備なのだろう。
一通りの作業を終えて、親父さんはうまそうに煙草に火をつけた。
今、こうして元気でいられるのも、
お父さんが残してくれたこの設備があること、
そして自分がやる仕事があること、
のおかげ様なのだと嬉しそうに語ってくれた。
八助のそばが美味しいのは、
勝山産のそば粉を義野商店で親父さんが精魂込めて挽いて、
それがすぐにそばになるのだから、当たり前と言えば当たり前だが、
改めて感謝して、いただかなくてはならないと思った。
八助(義野商店)
福井県勝山市栄町1-1-8
TEL 0779-88-0516
営業時間:11時〜14時 17時〜21時
定休日:木曜日
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