悪ガキだったたつやは、小学校から家までの間、まっすぐ帰ることは皆無だった。
今、考えたら立派な犯罪だが(当時でも犯罪かぁ・・・)
よそ様の家の庭になっていた果実をよく黙っていただいた。
のんびりした時代だったので、見つかっても、ちょっと怒られる程度。
たつや自身も、これくらいいいんでないんけ?と思っていたことも事実。
密かに学校周辺のどこの家に、どんな食べ物があるかの地図を作っていた。
栗、イチジク、柘榴、ナツメ、ビワ、柿・・・
そのどれもが、9月〜11月に集中していたので、
その時期がくるのを心待ちにしていた。
どこの家にどんな栗の木が・・・どうやってブッロク塀をよじ登ったか・・・
ということは不思議と今でもはっきり覚えている。

武生のそばやさんの帰り、立派な柘榴の木を見つけて車を停めた。
そこにいたおばちゃんに聞いたら、この木は100年以上経つらしい。
口に含んで、種の回りにわずかについた赤い実の果汁を吸って
その後、種を一気に吐き出した時の快感を思い出した。

柘榴の色、形、味、香り、食感、触感、
人間の思い出は、本当に五感とともに残っている。

最近は柘榴も見なくなりましたね。