外のショーウインドウから覗いてみると、昭和の匂いのする商品が並んでいる。
中に入るが誰も出てこないので、しばらく見学することにした。
ガラス製のレモン絞り、アルマイトの蒸し器、
昭和のキャラクターの箸入れなど懐かしいものが置いてある。
そこで変わったモノを見つけた。
焼き印だ。
20センチほどの鉄の棒の先に直径2センチほどのやはり鉄製のハンコのようなものがついている。
もちろん文字は様々で、逆文字。
かなり錆が出ていて、戦後間もない頃に作られたものではないかと思われる。
焼き印を見ているうちに店の奥で物音が聞こえたので
「こんにちは〜」と声をかけると奥からおばちゃんが出てきた。
この焼き印はいくらかと尋ねると、昔は一本500円だったが、
古いし文字も揃っていないため、200円でいいと言った。
暗くて文字が見にくいだろうからと懐中電灯を貸してくれる。
自分の名前や家族の名前の一文字を探して全部で11本を買うことにした。
おばちゃんは、こんなものを買う人は珍しいと、2000円でいいと言うのだった。
写真は実際に娘の太鼓のバチに焼き印を入れてみたもの。
高見潤の生家の前を通り、風情のあるそばや森安のところで海側に降り、戻ることにした。
この辺りは人通りもなく、ひっそりしているが、きれいな鉄線が植えてあったり、
面白いステンド風のガラスがあったり、港町独特の建物に出くわしたり、と全く飽きることがない。
そういえば三国焼のご主人が近所に『鬼久』の人形が置いてあるおうちがあると、
言っていたのを思い出して、ずうずうしくも訪ねてみた。
その家はもともとは麹屋をしていた旧家で、140年前に作られたその三体の人形は
三国出身の有名な人形作家『鬼久』の作品ということだった。
あまりにも見事な人形で、そのいきいきとした表情は、今にも動き出しそうに見える。
髪の毛とかは多分人毛を使っているのだと思う。
中にいらっしゃったもうすぐ80になるというおばあさんに
いろんな話を聞かせてもらった。
浅学菲才のたつやにはチンプンカンプンの話もあったが、
改めて三国の文化のレベルの高さに感心することとなった。
続く